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「ね、きり丸くん。髪結いの練習台になってくれないかな」
「いいですけど。変な髪形にしないで下さいね」
もちろん、君に似合う髪形にしてあげるよとタカ丸はにっこり笑って答えた。
タカ丸に頼まれて、きり丸は斉藤家の髪結い処にやってきていた。用意されていた椅子に坐り、タカ丸のなすがままだ。
「きり丸くんの髪はね、とても綺麗なんだよ。」
嬉々として髪を結うタカ丸さんを見ながら、きり丸は「やっぱりこの人、忍者に向いてないな」と思った。
手入れの行き届いた鋏と櫛。
心地良く梳かれる櫛にきり丸は眠気を催した。
しばらく目を閉じて、タカ丸のなすがままに任せた。
どれくらいの時間が経っただろう。
「はい。きり丸くん、ついでにこの着物に着替えてくれないかい」
タカ丸が差し出したのは女物の着物だった。いつも着ている麻の着物とは違ったすべやかな布。
「タカ丸さん、もしかして」
タカ丸はにっこり笑って答えた。
「そうだよ、ぼくが考案した新しい女性の髪型に今、きり丸くんの髪はなっているんだ」
この着物を着て、町を歩いて来てくれないかなとタカ丸は言った。
「髪結いの練習台だけじゃなかったんですか」と問うと、タカ丸は、きり丸くんの髪をいじってたら創作意欲が沸いてしまったんだと事も無げに言った。
きり丸は仕方なく白を基調にした肌触りのよい着物に腕を通した。タカ丸が、帯を締めて化粧をしてくれる。人に化粧をしてもらうのは、山田先生から女装を習ったときに化粧をしてもらったとき以来だったので、きり丸は口紅を塗られるとき少しばかり緊張した。タカ丸の小指が、自分のくちびるの上をなぞっていくのがこそばゆい。
「出来たよ」
と鏡で自分の姿を見れば、真白い着物に朱帯を締めた若い娘が其処に居て、きり丸は言葉を失った。
頭の上に結い上げた髪は、美しい曲線を描いていて、珊瑚のかんざしが印象的だ。
「きり丸くんは男にしておくには本当にもったいない髪だよね」とタカ丸が言うと、タカ丸の父親が隣の部屋から暖簾越しにきり丸を見遣った。
「本当に可愛くなったねぇ。じゃあ、ちょっとうちの新作の宣伝のために市に行ってもらおうかしら」と市女笠をかしてくれた。きり丸が「バイト代、弾んでくださいよ」というと、タカ丸の父は、任せておきなさいと下手なウィンクをくれた。
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きりちゃんの女装…女装させるの好きです。
タカ丸さんは、休みになると髪結いに戻って、家業を手伝っているといいです。
忍術学園のみんなの髪を定期的に切ってあげているといいなあと思います。
20090116
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