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三郎が、舞った。
片足で立ち、緩やかに片方の足を地に着ける。両の腕を伸ばし。
手に持った紫紺の扇子が紅葉に映えて美しい。
何処で仕入れてきたか知れない、女物の白い着物を装束の上に羽織り。
黄金に輝く稲を片手に持ちながら、ゆるりゆるりと円を描きありき。
三郎はいつの間にか、裸足になり、枯れた葉を、地を踏みしめ、踏み鳴らし。
たおやかに袖を振り、扇子を返す。
皆の口から、
ほう
ほう、ほう
ああ、
と、声が漏れ。
拍子を取るように、手を鳴らし。
やがて、幼きものたちが共に踊り。
それはそれは、楽しくてしょうがないといった風。
あたりは春野。
今日、この日の喜びを。
乾いた風が、頬を撫ぜる。
風が告げる。
眼を開ければ、錦の衣。嵯峨野に劣ることはなし。
五穀を収穫できた幸いを。
無事に過ごせた幸運を。
皆でいることが出来ることを。
安穏な日々は、そう長くは無いのだと、知ってかしらずか。
ただただ、足を踏み鳴らして舞い踊り。
念仏を唱えて踊っても、きっとこの喜びは判らない。
ただ今日は。今日だけは。共に食べ、踊り。
嗚呼。
今日もまた、日が暮れていく。
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