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Christmasと疫病神  1/2幕

冬が到来した。
街中には、クリスマスのデコレーションに溢れかえっている。未だ11月であるのにも関わらず、クリスマスに向けての商魂がたくましい。住宅街も、町の動きを無視しておらず、窓辺には様々な色に点灯する小さなクリスマスツリーや電球が、住宅街を彩っている。一方、郵便局の前には門松が設置された。11月である。縁起がいいかも知れないけれども、気が早すぎで何だか着いて行けない気がする。そんな町中を、きり丸は新聞配達と牛乳配りをしながら、自転車で駆け抜ける。朝の6時といえども、太陽が昇らず、暗くて寒い。今日も良い日でありますように。きり丸はそっと祈った。

 

きり丸の通う高校でも、クリスマスは話の話題に上っている。
高校2年生にもなれば、異性と付き合うことも、社会勉強の一つである、と言えないこともない。きり丸は、授業中、クリスマス商戦に載って、一儲けしようかと思案していた。きり丸の状況を―身寄りが無くて、奨学金とアルバイトで生活しているということを―クラスの皆がそれとなく知っているので、きり丸が声をかければ簡単に人が数人集るだろう。10月に、とある模擬店をした文化祭での売上金が全学年中、最も高く、その大半がきり丸の学費に当てられることになり、残った些細なお金で、マックの100円バーガーを、たらふく食べることで満足した、心優しい連中である。

 

課外と4時間目の授業が終わった。高校生の昼休みといえば、弁当を開いて、今日の卵焼きは不味いだの、金欠なのに親が弁当を作ってくれなかったという愚痴に始まる。食し終えた後は数学や英語の単語のテストに備えたり、終えていない予習を必死にしたり、机に突っ伏して寝ていたり、人知れず読書をしたりする。気になるあの子の話をそれとなくしてみたり、人の悪口のような毒を吐いてみたり、旬な漫画の話で盛り上がったり、体力が有り余って体育館にバスケをしにいったり、運動場で野球をやったり、バレーをしたり、サッカーをしたりする。保健委員会の臨時招集があったり、日によっては部活動の話し合いもあったりする。昼休みは、とてもバリエーションに富んでいる。

 

気温が下がってくると、教室は廊下との温度差がかなりある。教室から出る奴は、殆んどいない。窓を開ける奴なんて、更にいない。時々、教室を訪れた担任や次の授業の担当教員が、「窓を開けろ!」というので、渋々、3分間ほど窓を全開にするときもあるけれど、自ら進んで開ける奴など誰もいない。いたら、クラス中からの総ブーイングを食らうのが分かっているからだ。

今日は冬にしては珍しく、太陽が覗き、教室を温めていた。女生徒たちは、授業が終わった途端、窓際の席を男子生徒たちから席を脅し取り、小春日和を楽しんでいる。冬風の吹きぬける廊下側に押しやられた男子生徒たちは、不満であるが、女性に手出しをするような分別が無いわけではないので、黙って席を譲って、二人分の弁当を掃き込んだ。

 

「今日は温かくてよかった」

「末端冷え性にとって、冬は拷問以外の何者でもないわ」

「窓を開けてみたけど、風はやっぱり冷たいわ」

「次の時間、何だっけ。英語?え、構文のテスト?やだ、私忘れてきた。ちょっと、貸してよ」

「でもさあ、昨日の山風は良かったー!梅本君!」

女子の話は、あちらこちらに冬でも花を咲かせてしまうのが面白い。

 

4時間目に授業が無い先生は、早く昼が食べれるから良いよなあ」

「でもさ、一人で食べても、空しいだけだよ」

「課外が終わったら、腹がすくだろう?早弁しても、足らないよ」

「ああ、分かった。おい、皆急げ!い組の連中に、場所をとられちまう!」

「ろ組は、もう食べ終わったのかな」

「あいつ等は、俺たちの弁当より量が少ないからなぁ。」

育ち盛りの少年達の食欲は、果てを知らない。

 

いつものおにぎりをきり丸が食べていると、校内放送があった。
図書委員は1320分までに、図書準備室に集合してくださいと、能勢先輩の声が言っている。きり丸は、乱太郎に後のことを頼み、図書館へ去っていった。

 

団蔵をはじめとする所謂、「体力馬鹿」な軍団は、忙しいお母さん泣かせの二人分の弁当をぺろりと食い尽くすと、慌しく教室から消えた。すし詰め状態の教室に入り口から冷たい風が入って、むさ苦しい空気を清浄にしてくれる。数日後に迫ったクラスマッチの練習だろうと、クラスの女生徒たちは、人口密度の減った教室を横目に見て、噂話に花を咲かせつつ、心の隅で思った。は組の男子連中は、普段の勉強はからきしだけれど、チームワークという点では、他のクラスに勝っている。担任の自慢だ。

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